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対 談

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中国学研究者・元浦和高校教諭長島猛人氏

ユーチューブの論語が人気

角田 いつも武州路の「生きていることば」に原稿を頂いておりますが、直接お会いするのは久々です。ご無沙汰でしたが、今日はよろしくお願い致します。
長島 そうですね、久しぶりですね。
角田 ところで、今から2年ほど前からでしょうか、先生がユーチューブを始められていますね。あれにはちょっと驚いたんです。感覚的にはユーチューバーと先生が結びつかなくて…(笑)。
長島 そうそう、そうなのよー。
角田 そのユーチューブのテーマが論語ですから、これに関してはなるほどなっていう感じです。で、何故あれを始めようと思われたのか、そのへんからお話しを進めていきたいですね。
長島 あれはね、すでにやってる先生がいるんですよ。加地伸行先生っていう方なんですがね、大阪大学の名誉教授かな。ちょっと見たんですがまさに大学の授業をやってるような感じでした。
角田 なるほど…。
長島 それを見た人が「あれでは学校の授業そのものだ。ユーチューブの意味がないんじゃないかな」って言ったんですよ。
角田 ユーチューブ的じゃないというのはどういうことなんでしょうね。
長島 彼が言うには、ユーチューブだったらもっとチャラチャラやればいいんだって。「そうなの?」って聞いたら、「先生、やりましょうよ」って言われたんです。
角田 それはどんな方だったんですか。
長島 私の教え子で、もう50代半ばになるのかな、埼玉県中小企業同友会をやってる人です。彼が「僕がアップしますから」って言うんです。
角田 その方が撮影とかアップとかをすると言うことなんですね。
長島 はい。でね、私は原稿などは作らずに10分で話せと言われれば、さっと話しますからね。そしたら「それなら楽ですね」って言うんです。
角田 それですぐに撮影に入ったんですか。
長島 すぐにやってみようということになって、1回分10分の動画を3本撮りました。それを毎週やってましたよ。
角田 「長島猛人の10分で見る論語」っていうのがユーチューブでの題名ですね。先日見ましたらもう138回まで来てますね。
長島 そうですね、でもネタは250回はありますから。で、「これをやってなんのためになるの?」って聞いたんです。そしたらね「商売になる」っていうんですよ。それだけじゃなくて、彼自身も仲間と一緒に同友会の中で論語の勉強をしているっていうんです。これが1つね。
角田 はい。そのほかにも?
長島 あのようなものでやれば、北海道や九州、大阪、京都などいろんな地域の人が参加できるっていうんです。まあそうだよねって。
角田 それがユーチューブというか、ネットの最大の長所ですからね。
長島 それが仕事面でも役に立つんだって言うんです。で、「そのためにも論語を面白くして欲しいっ」て言われましたね。
角田 面白く…ですか(笑)
長島 だからね、「そう言うけど君たち学生時代に授業でほとんど聴いてなかったじゃないか」って言ったら「だからそういう授業みたいなのじゃ困るんだ」って(笑)。とにかく面白くしろっていうんです。
角田 論語を面白く説明すると言うことは、なにか現実的なテーマに論語で言っていることを結びつけるといいんでしょうね。
長島 そうそう。その方針でやってるんですよ。で、企業経営とか子育てとかそういうことに言葉を引っ張ってきて無理矢理解釈しちゃおうかって始めたの。
角田 なるほどねえ、やはりそういうことを言う人がいたんですね。納得(笑)。
長島 しかも複数いたんです。
角田 論語と言えば何年か前に渋沢栄一が大河ドラマになってブームが起きましたね。あのあたりのことも始めたきっかけになっていたりしますか。
長島 もちろん。江戸時代の商人というのは、どんな人でも教養として論語を知っていたんです。渋沢にしてもそうだし、テレビには出なかったけど二宮金次郎だってそうなんです。だからその中に必ずヒントがある。
角田 なるほどね。そうなんですね。
長島 それに、論語はいろんな時代で使われ方が違ったんです。で、江戸時代は道徳的に使われたんですね。戦国時代には戦争のためにも使っていました。もっと前は平安時代の貴族の教養のため。渋沢はパリにいってから急に論語のことを言いだしたんです。
角田 どんなことを言いだしたんでしょう。
長島 「資本主義は論語とこんなにくっついている」って言いだして「へーっ」と思って調べたんです。
角田 どんなことが分かりましたか。
長島 論語の中では打算についてやってはいけないと言ってるんですが、あきらかに打算があるのもあるんです。孔子があちこち放浪していたけど、お金はどうしたのか。それは弟子の子貢が稼いでいた。子貢は「先生を高く売ります。私が売り込みますから」ってね。これまさに資本主義です(笑)。
角田 「巧言令色少なし仁」という言葉がありますよね。あれ、子どもの頃に学校で習った意味は「いいことばかり言う人は本当の意味で貴方のためになる人ではない」というような感じでしたね。それ以外に何か深い意味はないんですか。
長島 そのまんまですよ。深い意味はない。あれね、例えば自動車の営業マンと一緒ですよ。いいことばかり言う。そうしないと売れないからね。で、中国では位の上の人が逆らわない人ばかり使う。それも孔子は見抜いています。誠意がないから気をつけろって。実際こういう人がたくさんいるんですよね。
角田 そうしてみると、論語って今の時代でも読んでいくと面白いものがたくさんありそうですね。
長島 今の時代に当てはめていったら、まるっきり、ガラッと面白くなるんじゃないかな。昔からの道徳的な論語を捨てればね(笑)。
角田 なるほど、捨てるのね(笑)。今風に解釈していけば面白い?
長島 そう。いくらでもありますよ。そういったことを今ユーチューブでやっているんです。
角田 そうか、冒頭でもちょっと触れたように学校の授業風ではなく、「もっとチャラチャラやる」っていう部分かな。
長島 それなんです。ユーチューブでやっていることを目次にして並べてみました。これなんですが、たとえば6番を見て下さい。「人徳者は孤立しやすい」ってありますよね。例えば社長などはとても寂しい。相撲の横綱も孤独。こういうのって小学校の時から自分を磨いて有徳な人にしようという教育をしてますね。でもそれは孤立することを覚悟しなさいよって意味があるんです。だからひとりぼっちとか心の病気っていうのは『出来る子』に多いんです。
角田 うーん、そうか。
長島 ひとりぽっち、理解してもらえない。そりゃそうですよね。頭いいんだから。
角田 頭のいい子じゃなくて出来ない子でも孤立するってことはないんですか。
長島 できない子で孤立するのは虐められてる子かな。ちょっと違うんですよね。
角田 この目次集の7番にある「向上発展のためには立場での引き継ぎはしない」というのはどういう意味ですか。
長島 引き継ぎっていうのは日本のやり方ですね。向こうでは引き継ぎはしないんです。
角田 仕事上での引き継ぎをしないと、うまくいかないのでは?
長島 引き継ぎをしたら、新しく来た人が自分のことを出来ないんです。新しいことをやっていきたいんですから。前の体制に新しい人の能力を入れる意味は「変えること」。これも論語の中には書いてあります。
角田 こんなふうに見ていくととても面白い。
長島 そうなんですよ。「色とは男色も含む」なんていうのもあります。孔子さんは両刀使いなんだろうか(笑)。LGBTなんかも考えられるんじゃないかな(笑)。
角田 うんうん、あり得ますね。先生のユーチューブ風に考えていったら面白すぎる。
長島 はい、それに尽きるからね。いろんなところで、子育てにも役に立つみたい。それでフォロワーもずいぶん増えてきました。
角田 何人くらい?
長島 今ねえ、500は超えてますね。1ヵ月に20〜30くらい上がってきますね。
角田 その調子でしたらまだまだ増えていきそうですね。
長島 はい。それでね、私の10分の論語を1分の論語、2分の論語にしちゃう人もいるんです。
角田 先生の論語をさらに要約してしまうんだ。そんな人まで出てきたんですね。
長島 それを見てる人もいるみたいで、そこから私の方へ繋がってくるというのもあるようです。
角田 先生の論語は毎回10分ですね。
長島 はい、毎回10分です。論語の話としては10分でも短いと思っていたんですが、それでもそんなに見ていられないっていう話もあるようです。
角田 確かに、ユーチューブでは5分以内とか2分くらいのものって多いようですね。
長島 そうそう。2〜3分でないとダメだって言われたんですけど、それは皆がやってくれって言ったんです。私はあくまで10分だって(笑)。
角田 毎回のテーマは先生が自分で決めているんですか。
長島 そうそう。
角田 それほど手間がかかっているわけではないんですね。
長島 ぜんぜん(笑)。しゃべるのはプロだから。話だけじゃなくて、例えば400字で原稿を書けと言われればピッタリ書けます。そういう能力はついちゃったようです。
角田 うん、それが素晴らしい。それ出来ない人が多いんです。400字で書いて欲しいと言っても800字書いちゃう人とか(笑)。
長島 面白いのはね、一度書いて出来上がった原稿を無くしちゃった時です。
角田 それはショックだ。
長島 ですけどね、仕方がないからもう1度書き直すじゃないですか。そうすると最初に書いた物よりずっと良くなるんですよ。
角田 うん、なんとなく分かる。
長島 それが100枚でも200枚でも、無くしたときはガックリしますけど、書き直すともっと良い物になる。
角田 さて、このへんで少し先生のことを…。学校の方は定年を過ぎましたよね。今はユーチューブ以外にどんな活動をされているんですか。
長島 子どもは教えてないです。大人ですね。主に市民講座で教えています。12〜13くらいやってますよ。公民館とかお寺とかでね。あとは東京で教え子達を対象に論語の会をやっています。これが一番大きいかな。論語の中でニュースのことは必ず触れていきます。銀行強盗とか特殊詐欺とか、いろいろ。
角田 なるほどね。いろいろなニュースが報道されたら、それをテーマにして論語の話をするんですね。
長島 そうそう。
角田 それは「生きた論語」の感じがしますね。興味もあるし、とても素晴らしい企画ですね。ユーチューブも同じ方針ですね。
長島 そうです。渋沢の話もそうでしたし、朝の連ドラでやっている牧野富太郎だって論語を知ってるんですよ。あの頃の人は凄いですよね。富太郎は小学校しか出ていないのに国語力がとても高いです。
角田 これだけ多くやっていると忙しそうですね。
長島 1ヵ月の半分は活動してます。あとは健康のためにランニング5㎞と水泳500メートル。
角田 それは素晴らしいですね。とてもご多忙のところを今日はありがとうございました。