小池礼凌

書家

書を仕事に活かして

 

  • 角田 今月は久しぶりにお若い方との対談になりました。お名前、何て読んだらいいのかわからないのですが…。

    小池 礼凌と書いて「あやり」って言います。

    角田 ほう、漢字そのものは難しくないのですが、読み方となると難しいですね。なかなか読めない。

    小池 そうですね。たとえば学校で一番最初に先生の点呼がありましたけど、今まで一度も正しく名前を呼ばれた事はなかったです。だから自分から名前を言っていました。

    角田 そうでしょうねぇ、読める人がいたら、その方が珍しいと思う。

    小池 そうですよね。

    角田 さて、小池さんはまだお若いですから今の仕事に就いたのも最近の事ですよね。

    小池 はい、今年の4月から新卒として今の会社に入社しました。

    角田 仕事の内容はどのような事なんですか。

    小池 私の会社は販促物としての暖簾とか幟、旗、提灯、横断幕などのようなものを作っています。横断幕などはお店や会社の販促物だけでなく、例えばスポーツの試合で掲げるものなどもあります。

    角田 ということは当然のことながら文字を書いたりデザインをしたりという仕事も発生してきますね。小池さんはそのような事もされているんですか。

    小池 私は基本的にお客様からの依頼やデザインなどを受け付けたり、事務仕事をしたりということをしています。普通は販促物に使う文字も、すでに出来上がっている文字を使うんですね。

    角田 でも、小池さんが書いた文字が販促物に使われているという実績もあるそうですね。

    小池 はい、それは入社前の面接の時に、「小さいときから書道をしている」ということを話しましたので、入社後にたまたまそのことを覚えていてくれまして、販促物に使う文字を「書道の文字で書いてみないか」って頼まれたのです。それで、幟などに関する文字を書きました。

    角田 上の写真の文字がそうですよね。この文字というのは普通の書道とは違う書き方をしているんですか。

    小池 そうですね、普段私がやっているのはお手本があっての書道と、もう1つは自分で好きに書くという書道なんです。で、今回の文字はお手本があったのではなくて、私が好きに書いた文字なんです。

    角田 でも、このような販促物の文字を書く時というのはいつもの書道の文字とは違うでしょうね。どんなことを心掛けて書いていますか。

    小池 そうですね、幟用ですと、太い字でないと映えないので、いつもよりは太く書くようにしました。

    角田 なるほど、そうなんでしょうね。ところでこのような仕事に就いた前提として書道をやっていたということがると思うんですが、書道はいつ頃からやっていたんですか。

    小池 私は6歳位の頃から近所にある書道教室に通い始めました。燎原社書心会っていうところで、先生は佐渡壽峰先生でした。そこで書道の基礎を学び始めた事で私の書道の人生が始まった感じです。

    角田 6歳の幼い子供が何かを始める時っていうのは、自分から興味を持ったのか、それとも親が始めさせたのか、どちらだろうっていつも思うんですよ。書道に限らず、ピアノだったり、ダンスだったり、いろいろありますよね。小池さんの場合はどちらでしたか。

    小池 私の場合ははっきりした記憶はないんですが、最初は近所の方の娘さんがそこに通っていらして、「いいよ」っていう話を受けて、祖父が「習ってみたら?」って言いました。で、私も習ってみたいという気持ちがあって始めたんだと思います。

    角田 まあ、6歳ですから、深い意味での書道とかではなくて、文字を書くのが楽しそうだとか、そういった気持ちが強かったんでしょうね。

    小池 そうですね。書き初めなどでも素敵な字を書きたいという気持ちもあったと思います。

    角田 6歳で始めてから、ずっと辞める事なく続けてこられたんですね。

    小池 はい。いまだにその教室には通っています。

    角田 小学校から大学まで、学校でも書道部に入っていたんでしょうか。

    小池 そうです。

    角田 それで、大学は駒澤大学ですね。

    小池 はい。

    角田 本誌の「書の楽しみ・書壇」を担当されている書家の鈴木不倒先生も学生時代は駒澤大学で書道部にいました。いまでも駒澤大学の書道部で講師をしていますよね。

  •  小池 そうですね。ですから鈴木不倒先生とは大学で知り合いました。大学では4年間指導して頂きましたし、大作の書作展の指導もして頂きました。

    角田 幼い頃から始めた書道を途中で辞める事なく続けてこられたのは、それが楽しいから、あるいは好きだからと言うのもあったと思うんですが、書道の魅力ってどんなところにあると思っていますか。

    小池 書道をやっていると心が安まるんです。書道はいくらでも続けられるし、時間を忘れるくらいやっていられるんです。

  • 角田 うんうん、その辺にカギがありますね。好きな事って苦にならない。いつまでもやっていられる。時間が経ったのも忘れてしまって、気がついたら徹夜をしていたなんていう経験が私にもありますね。

    小池 のめりこむと疲れを一切感じないですね。書道をしていない友達が「書道って疲れる」って言うんです。でも、私にはそうじゃないなって(笑)。

    角田 書道と言えば何年か前に書道甲子園とか書道ガールとか、テレビでブームになった時代がありましたね。パフォーマンスでとても大きな文字を書くシーンが放映されました。あんなこともやったんですか。

    小池 中学、高校時代はやったことがなくて、駒澤大学に入ってから初めてパフォーマンスをやらせて頂きました。

    角田 あのシーンを見ていていつも思うんですが、文字の形がわかるんだろうか。上から俯瞰してみればわかるでしょうが、同じ用紙の上にいるんですからね。

    小池 初めてやったときにわかったんですが、自分で思っていたよりも小さい字でした。あるいはいくつもの文字のバランスがわるかったり…。

    角田 最初はそうでしょうね。

    小池 さらに何人かでやるので他の子たちと大きさや書体を揃えないといけないということもあります。

    角田 それにもかかわらず、仕上がった作品を見ると、よくまとまっているんです。あれは凄いと思います。

    小池 練習あるのみですね。

    角田 さて、駒澤大学での4年間は鈴木不倒先生についていたわけですが、鈴木先生ってどんな感じですか。

    小池 6歳から通っていた教室では流れるような描き方というか気持ちを込めて書くという事を習いました。また、中学校や高校の書道部では文字の整え方やお手本の見方などを教えてもらいました。不倒先生には、その2つのことを踏まえた上で作品の見せ方や面白い作品になるような書き方を教えて頂きました。ですから不倒先生は私にとって新しい書道の世界や幅を広げて下さった先生だと思っています。

    角田 今は段位ではどこまでいっているんですか。

    小池 鈴木不倒先生のところでは準4段です。

    角田 将来的にはどこまで伸ばしたいと考えていますか。

    小池 師範を目指して頑張っています。

    角田 そうやって長い期間、書道をやった上で今の会社に就職したわけですが、仕事はどうですか。

    小池 とても楽しく仕事をしています。文字を書くのがメインの仕事ではなくて日常の業務を主にしています。そういった業務があってこその書ですが、でも文字を書かせて頂けるので、とてもやり甲斐があります。

    角田 仕事が楽しいというのはとても幸せな事ですね。なかには仕事が辛い人もいますからね。

    小池 そうですね。とても幸せな事だと思います。

    角田 仕事とは別に書の世界では将来の夢の様なものはなにかお持ちですか。

    小池 やはり夢と言えば書の個展を開きたいという事ですね。

    角田 なるほど、素晴らしい夢ですね。

    小池 きっかけとなったのは、高校2年生のときに、ロサンゼルスに短期留学をした事です。ホームステイ先の人や、ほかの外国人の人たちと縁が出来て、1年後の3年生の時にまたそこに行ったんです。その時に縁が出来た多くの外国人の人達に書道の作品を定期的に送りました。フランス人の女性はお店を開いていて、そこに私の作品を飾ってくれました。それで、みんな喜んでくれました。

    角田 それは素晴らしい経験ですね。

    小池 はい。ですから私の最終的な夢は海外で書道を広げたり、個展を開きたいということなんです。

    角田 大きな夢ですね。でも素晴らしい。日本の文化は海外でも注目されますからとてもいい事だと思います。

    小池 はい。海外の方は書道の作品をとても喜んでくれます。

    角田 そうでしょうね。さて、海外の話が出ましたが、旅行がお好きだそうですね。

    小池 はい。中国や台湾などで、筆とか紙とか作品とか見るのがとても楽しいです。

    角田 書道をする人にとっては中国は原点でしょうからね。

    小池 でもグアムとかハワイ、それにヨーロッパなどの旅も好きですけどね。

    角田 ところで、よく外国人と間違えられる事が多いそうですね。

    小池 そうなんです。国内のディズニーランドや喫茶店などでも間違えられるんです。レストランなどで普通だったら「何名様ですか?」って聞かれるのに「How many?」なんて聞かれちゃったりします。

    角田 面白いですね。顔立ちからすると東南アジア系とかフィリピン人などに間違えられるのかな。

    小池 はい。成田空港などでも空港で働いている日本人の方から英語で話しかけられます。

    角田 そんな時はどうしますか。

    小池 恥ずかしいから、そのまま英語で返事しちゃいます(笑)。飛行機の中でもCAさんから英語で話されます。たとえば機内食を何にするか聞いてくる時に、弟には普通に日本語で聞いているのに、私には英語で聞いてくるんです。

    角田 へー、そんな事があるんですね。

    小池 卒業旅行でグアムに行ったときなんかは、グアムの人に「あなたはグアムの子でしょ」なんて言われちゃったり…。「純日本人です」って言ったんですけど「イヤ絶対嘘だ」って言われてしまいました(笑)。

    角田 凄い話ですね。日本人だけじゃなくて、外国人にも間違われるんだね。

    小池 ほんと、ビックリです。

    角田 面白い話でした。これからも書道に仕事に頑張って下さい、夢の実現、期待しています。