町田啓介

秩父商工会議所副会頭

願い石巡礼を仕掛けて

 

  • 角田 今、秩父エリアで「願い石巡礼」が流行の兆しを得ていますが、これ、なかなか面白い企画ですよね。聞くところによりますと、町田さんたちが仕掛け人だと伺ったのですが、どういうことなんでしょうか。

    町田 はい、確かにこれは地域資源活用の一環として私が中心になって始めたものなんです。まあ、地域資源活用みたいなことはこれに限らず、以前からチョコチョコとやってはいたんです。

    角田 なるほど…。

    町田 その中で、聖神社との関連で考えたことですが、神社やお寺というのは最近ブームになってはいますが、一般の観光客との間では、まだまだ距離感があるんじゃないかと思っていました。

    角田 そうは言っても、秩父では34ヵ所の札所が既に有名になっていますよね。

    町田 確かに、34ヵ所だけでなく、秩父神社や三峯神社のように有名なところがあって、ある意味聖地のようなイメージもあります。でもね、札所巡りというと、白装束で巡るというような印象から、あまり気軽に考えていない人がいることも事実です。ですから、その辺の距離感を何とか縮められないかなと思った訳です。宗教と結びつけるのではなくて、もっと気軽にね。

    角田 確かに札所巡りでは34ヵ所と数も多いですし、あまり気軽に巡るということは出来ないかもしれないですね。

    町田 そうそう、34ヵ所を巡るというのはちょっと大変なんですよね。もっとコンパクトに出来るものはないかと…。

    角田 最近でこそ、納経帳を持って34ヵ所を巡る若い人も増えていますが、イメージとしてはなんとなく高齢者がやっているものという感じもしました。

    町田 気軽に巡れることも大切ですが、それぞれのスポットには、そこで得られる御利益がいろいろとあるんですよ。これらに結びつけて巡れるようなものを考えたかった訳です。例えば聖神社と金運というように…。他にも健康や、学問、恋愛、子宝や安産など様々な御利益のあるスポットがあります。それをクローズアップさせたらいいだろうと思いましたね。もちろん嘘じゃダメですけどね。

    角田 嘘じゃ何も生まれませんね。もともとこの神社にはこんな御利益があると言われていたというものがないとね。

    町田 そうそう。煙も何もないような、とってつけたような話では説得力がありません。きちんとしたいわれがあって、どんな効果が得られるかというようなことをよく調べて始めました。

    角田 ほう…。

    町田 けっこう調べましたよ。いろいろと。でね、神社やお寺に御利益があると言うのはわかりますよね。その御利益に何を結びつけるのか。これが大切なんです。

    角田 それが「石」ということだったんですね。

    町田 そう。例えば「恋愛」に御利益があると言われる「パワーストーン」もあったんです。同じように御利益のある「神社仏閣」と「石」を結びつけたら面白いだろうと考えました。

    角田 それ、目の付け所が素晴らしいですね。パワーストーンというのはとても良いと思います。それに今の若い人の間ではパワースポットというのも注目されていますね。神社やお寺はまさにパワースポットの代表格ですね。

    町田 パワースポットに石を結びつけようというのはミーティングの中でディスカッションしました。パワースポットと同じように、パワーストーンというのも昔からずーっとブームだったんです。だからこの2つを結びつけるというのは必然ですね。都内の人に聞いたら、パワーストーンでブレスレットを作ったり、ストラップを作ったりする店は各駅に1軒や2軒くらいはあるよって言うんです。それを聞いて「これだ!」と思いましたね。神社やお寺で授与されるものをパワーストーンにしたら、これは結構受けるんじゃないかと思いました。

    角田 その素材が秩父地方にあったということに気がつかれたわけだ。

    町田 はい。でも、流行や廃りがあってブレるものって、あまりやりたくなかったんです。要するに地域資源を世に出したかった。でもこれは非常に時間のかかることなんです。だから時間がかかっている間にブームが去ってしまったら困るんです。ある程度ロングランでムーブメントが起きているものじゃないとね…。

    角田 う~ん、仕掛けている間にブームが去ってしまったら、何のために始めたのか解らなくなってしまいますね。

    町田 そうです。それとね、聖神社のときに思ったんですが、人間の三大欲望ってありますね。それらをくすぐるプログラムっていうのは訴求力が強いなということも解ってました。

    角田 11ヵ所を回って11個の石を集めてくるというだけでも楽しいですしね。石と言っても宝石だし…。

    町田 それと、石が入っている袋にも工夫をしました。

    角田 袋? ああ、このキラキラした綺麗な袋ですか?

    町田 それじゃなくて、その袋ごと入っている白い紙の袋ですよ。

    角田 ああ。各神社仏閣などの名前が記された袋ですね。

    町田 そう、それです。それもねチャラチャラした袋ではなくて、ちゃんと神社やお寺で渡されるイメージが大切なんです。お守りのように…。

    角田 たしかに、この袋だときちんとしたイメージがあります。で、この 11ヵ所を選ぶにあたって、何か基準があったんですか。

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    町田 正直、ずいぶん回りました。それも神社やお寺さんには内緒でね。私のネットワークの中にはこういうことに非常に詳しい者がいるんです。いわれや歴史、地域との関わりなどです。

    角田 秩父とはいってもかなりの数がありますね。

    町田 そうです。でも無住のお寺や神社もかなりあります。そのようなところでは「石」を渡すことが出来ませんから、そういうところは外していきました。その上で金運とか恋愛とか健康とか学問とかの御利益にわけていきました。

    角田 そうでしょうね。御利益を選ぶのも重要ですね。

    町田 それと、小さなエリアにコンパクトにまとめるのではなくて、秩父地方に広域に設定したかったと言うのもあります。

    角田 小さなエリアにまとまっていると、訪れる人には巡りやすいと言うこともあると思いますが、あえて広域に広げていった理由というのは?

    町田 私どもとしては秩父地域全体を巡りながら楽しんで欲しいという願いがありました。そんなことから三峯神社に近い大陽寺から、長瀞の宝登山まで、さらには小鹿野の法性寺などにも広げました。

    角田 そういえば、宝登山は宝登山神社ではないんですね。「山」そのものの「宝登山」なんだ。

    町田 はい。そうなりました。ですから宝登山の「石」は長瀞駅横にあるお菓子の「栗助」と旅館の「長生館」で授与しています。

    角田 ほかには神社仏閣ではない場所として日野沢三滝というのがありますね。

    町田 はい。この場合は三滝の一つである秩父華厳滝入口にある茶屋で配布しています。話を戻しますね。広域で設定したもう1つの理由は、季節季節で変わる秩父の魅力、新緑だったり紅葉だったり、桜や芝桜、ポピーなどの花など、四季折々の秩父を楽しんでもらいたいということもあったんです。

    角田 この願い石巡礼の良いところは、札所巡りとは違って、巡り終わると11個の石が手元に残るんですね。これを加工してブレスレットなどにすることが出来る。これは女性には受けそうですね。

    町田 そうそう。これ、自分でカスタマイズ出来るんです。別売りの水晶5個とゴムがセットになっているキットを購入すれば出来ます。神様からもらった物だから本当は神棚などに上げておきたいという人もいらっしゃるでしょうけど、自由に楽しんで下さいというのが私たちが考えていることなんです。

    角田 とてもいいですね。もともと秩父は素敵な素材がたくさんある場所だと思うんです。埼玉県で観光地と言えば秩父地方が代表格ですね。あとは街の観光地で川越があるくらい。それに最近は西武鉄道がテレビCMで盛んに秩父をアピールしています。

    町田 あれは大きいですよ。テレビ番組などでも取り上げてくれますが、番組ですと1回放送されて終わりですよね。でもCMは繰り返して放送されます。あれって脳みそに入っちゃいますよね。潜在意識に記録されてしまうというか。

    角田 「ちちんぷいぷい~」というフレーズがすっかりお馴染みになってしまった。

    町田 それとね、二次的な効果と言うんでしょうか、一般視聴者だけでなく、CMを見てテレビ番組の制作会社の人たちが取材に来るようになりました。ですから今では1週間に1回と言えば大げさかもしれませんが、少なくても月に数回くらいは、どこかの放送局で秩父が取り上げられています。まあ、制作会社にとっては秩父って東京から近いから便利と言うこともありそうですがね。

    角田 経費も安く済みそうだし。

    町田 時期時期でいろいろなネタがあるんでね。

    角田 そういう意味では、商工会議所の副会頭としては秩父エリアをもっともっと活発にしていきたいというところでしょうね。そのために今後、どのようなことをしていきたいとお考えですか。

    町田 1つキーになるのは中心市街地ですね。秩父神社がど真ん中にありますが、あのあたりの環境整備をしたいですね。観光というエッセンスを加えながら商店街や通りを作り込む必要があるかな。

    角田 広域に見れば三峯神社のような素晴らし場所がありますね。でも駐車場が混雑で大変です。

    町田 あの駐車場は拡張が決まりました。まだ2~3年はかかると思いますが…。

    角田 それはいいですね。

    町田 ほかにも長いスパンで見れば秩父って、けっこう観光に投資しているんですよ。芝桜、ポピーやダリアなどもそうですし、民間で三峰口駅の近くにスリルのある施設が出来たりね。怖い吊り橋やジップライン、巨大な空中ブランコなどね。

    角田 最後になりましたが、町田さんご自身のことも少しお聞かせ下さい。今は「ゆの宿和どう」という旅館を経営されていますが、もともと旅館業ですか?

    町田 うちも元は機屋でした。秩父銘仙というのが昔から盛んでしたからね。でも戦争中に機械などが鉄の材料として供出させられてしまいました。そこで事業転換して旅館になりました。これからは観光業がいいだろうという判断でした。で、旅館としては60年になります。

    角田 町田さんは2代目ですか。

    町田 代で言うと4代目かな。祖父が始めて、祖母が短い期間ですが継ぎました。その後は父が継いで、その後私になります。

    角田 旅館の名称は「ゆの宿和どう」ですが会社名は「株式会社和銅鉱泉旅館」ですね。旅館業の他にも事業をされていると聞きましたが…。

    町田 お菓子の「栗助」をやっています。国道140号線を挟んで旅館の前です。長瀞駅横や秩父地場産センターにも支店があります。あと、地産地消型レストランとして「春夏秋冬」もやっています。

    角田 旅館の連絡先はどちらですか?

    町田 電話は0494(23)3611です。

    角田 今後もますますのご活躍を期待しています。今日はお忙しいところをありがとうございました。